排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管(DVLP)とは?特長と製品例を徹底解説

管類
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はじめに:進化する建築設備の配管材「DVLP」

建築物の快適性や安全性を支える上で、目立たないながらも極めて重要な役割を担うのが「配管設備」です。特に、汚水や雑排水をスムーズに排出するための排水管は、建物の機能維持に不可欠な存在と言えるでしょう。近年、この排水配管の分野で広く採用されているのが「排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管(DVLP)」です。

DVLP(Drainage Vinyl Lined steel Pipe)とは、その名の通り、鋼管の内面に硬質の塩化ビニル管(PVC管)を接着ライニングした複合管材です。この構造により、鋼管の「強さ」と塩化ビニル管の「耐食性・平滑性」という、二つの素材の長所を併せ持つ高機能な配管材が実現しました。本記事では、このDVLPがなぜ多くの建築現場で選ばれるのか、その優れた特長から具体的な製品例、耐用年数までを詳しく掘り下げて解説します。

DVLPが選ばれる5つの理由|その優れた特長を深掘り

DVLPは、従来の鋳鉄管や鋼管(SGP)と比較して、多くの優れた特性を持っています。ここでは、その代表的な5つの特長について詳しく見ていきましょう。

1. 優れた耐食性と排水性

DVLPの最大の特長は、内面にライニングされた硬質塩化ビニル管による高い耐食性です。金属管で問題となりがちな錆(さび)や腐食の心配がありません。これにより、錆コブの発生による管内部の閉塞や、それによる流水性能の低下を防ぎます。内面は非常に平滑であるため、汚れが付着しにくく、長期間にわたって安定した排水能力を維持することができます。経年による性能劣化が極めて少ない点は、建物のライフサイクルコストを考える上で大きなメリットです。

2. 高い耐火性と強靭性

ベースとなる管が鋼管であるため、DVLPは優れた耐火性を備えています。建築基準法で定められた防火区画を貫通する配管としても使用可能であり、火災時の延焼防止に貢献します。また、外面の鋼管は外部からの衝撃や荷重に対して高い強度(強靭性)を発揮します。これにより、施工中や供用中の物理的なダメージから内部のライニング層を保護し、配管システム全体の信頼性を高めています。

3. 軽量で優れた作業性

DVLPは、同口径の鋼管や鋳鉄管と比較して30%~50%も軽量です。この軽量性は、現場での作業性に大きな革新をもたらしました。高所作業や狭い場所での配管作業において、材料の持ち運びや取り回しが格段に容易になります。これにより、施工の効率化と作業者の負担軽減が図れるだけでなく、工期の短縮にも繋がります。さらに、建物全体の重量を軽減できるため、構造設計上のメリットも期待できます。

4. 快適な環境を実現する遮音性

集合住宅やオフィスビルなどでは、排水時の流水音が居住性や執務環境に影響を与えることがあります。DVLPは、鋼管と塩化ビニルの複合構造により、優れた遮音性を発揮します。その性能は、一般的に遮音性が高いとされる排水用鋳鉄管と同等レベルであり、管内を水が流れる音を効果的に抑制し、静かで快適な室内環境の維持に貢献します。

5. トータルコストを抑える経済性

配管材を選定する際には、材料費だけでなく、施工費やメンテナンス費を含めたトータルコストで評価することが重要です。DVLPは、前述の優れた作業性により施工が迅速に行えるため、人件費を削減できます。また、高い耐久性と耐食性により、長期にわたるメンテナンスコストも低く抑えることが可能です。これらの理由から、従来の鋳鉄管などと比較して、経済的な排水配管システムを構築できる優れた管材として評価されています。

【製品紹介】代表的なDVLP製品

DVLPは多くのメーカーから提供されており、それぞれが高い品質と性能を誇ります。ここでは代表的な製品として、協成の「キーロンDL D-VA」と積水化学工業の「エスロンDVLP」をご紹介します。

協成「キーロンDL D-VA」

株式会社協成が製造する「キーロンDL D-VA」は、DVLPの特長を高いレベルで実現した、信頼性の高い配管材です。

協成の排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管 キーロンDL D-VA の製品画像
協成 キーロンDL D-VA (出典: 株式会社 協成)

内面に硬質塩化ビニル管をライニングすることで平滑で優れた排水性を確保し、外面にはJIS G 3452(配管用炭素鋼鋼管)に準じた薄肉鋼管を採用。外部からの荷重や外力に強く、建築設備の汚水・雑排水・通気用配管材として幅広く利用されています。また、日本水道鋼管協会規格であるWSP-042に準拠した規格品であり、品質と性能が保証されています。

製品仕様(キーロンDL D-VA 5.5m品)

呼び径(A)近似外径 (mm)内面厚さ (mm)近似内径 (mm)長さ (mm)
4048.61.541.65500
5060.51.553.55500
6576.31.568.75500
8089.12.080.55500
100114.32.0104.75500
125139.82.0130.25500
150165.22.5153.85500
200216.32.5203.75500

※上記表は株式会社協成の公開情報に基づきます。詳細な仕様や最新情報については、公式のカタログ等をご確認ください。  協成ホームページより引用

積水化学工業「エスロンDVLP」

積水化学工業株式会社が提供する「エスロンDVLP」も、建築排水用として広く採用されている代表的な製品です。鋳鉄管や従来のコーティング鋼管と比較して、優れた作業性と経済性を両立させています。

エスロンDVLP直管
エスロンDVLP直管

エスロンDVLPは、DVLPが持つ「耐食性・排水性」「耐火性・強靭性」「軽量性」「遮音性」「経済性」といった特長をバランス良く備えています。特に、鋼管や鋳鉄管に比べて30~50%も軽いため、持ち運びや施工が容易で、建築設備の軽量化にも貢献します。その優れた作業性・施工性により、トータルで経済的な配管システムを実現できる管材として高く評価されています。

知っておきたいDVLPの基本情報

耐用年数と接合方法

  • 一般的耐用年数: DVLPの一般的な耐用年数は約20年~25年とされています。ただし、これはあくまで参考値です。実際の耐用年数は、設置される環境(温度、紫外線など)、施工の品質、使用状況、そして定期的なメンテナンスの有無によって大きく変動します。長期にわたり安定して使用するためには、適切な施工と維持管理が不可欠です。
  • 接合方法: DVLPの接合には、主に排水管用可とう継手が用いられます。代表的なものにMDジョイント(MD継手)などがあります。これらの継手は、施工が比較的容易でありながら、確実な水密性と、地震などの際に配管の変位を吸収する可とう性(柔軟性)を確保できるという利点があります。

まとめ:次世代のスタンダード配管材DVLP

本記事では、排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管(DVLP)について、その基本的な構造から5つの主要な特長、そして具体的な製品例までを解説しました。

DVLPは、「耐食性・排水性」「耐火性・強靭性」「軽量性・作業性」「遮音性」「経済性」という、現代の建築設備に求められる多くの要求を満たすバランスの取れた高性能な配管材です。その優れた特性は、建物の品質向上、工期の短縮、そしてライフサイクルコストの削減に大きく貢献します。

建築物の配管計画において、DVLPは非常に有力な選択肢の一つです。製品を選定する際には、本記事で紹介した「キーロンDL D-VA」のような信頼できるメーカーの製品仕様やカタログを確認し、用途や条件に最適なものを選ぶことが重要です。

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