建築・設備・電設の現場で使われる「塩ビ管」は、その軽さと施工性の良さから、今やインフラの基本的な部材といえる存在です。しかし、2020年代以降、年に数回レベルで「塩ビ管値上げ」が発生するようになり、現場では混乱も少なくありません。
「なぜ塩ビ管は値上がりするのか?」「いつ上がるのか?」「どう備えればいいのか?」
この記事では、こうした疑問に答えつつ、実際に現場で取るべき対策を具体的に紹介します。
なぜ塩ビ管は値上がりするのか?
塩ビ管は「塩化ビニル樹脂(PVC)」から作られた合成樹脂製の管です。VP管、VU管、HIVP管など用途に応じて種類がありますが、どれも石油由来の材料でできています。そのため、世界的な原材料価格の変動や物流コストの上昇が直接的に価格に反映されます。
主な値上げ要因は以下の通りです。
■ 原材料(PVC樹脂)の高騰
PVC樹脂の元になるナフサ(石油製品)は、原油価格に連動します。中東情勢やOPECの動き、戦争・政情不安などで原油価格が高騰すると、原材料費が数十%単位で上昇することもあります。
■ 為替の円安傾向
PVCの一部は海外からの輸入原料を使用しており、円安が進行すると仕入れ価格が高くなります。2022年〜2024年にかけての急激な円安は、管材業界に大きな影響を与えました。
■ 輸送・物流コストの上昇
塩ビ管は長尺・かさばる商品のため、運賃の高騰が価格に直結します。トラックドライバー不足や燃料費の高止まりも問題となっており、管材業界では年に1回〜2回、価格改定が繰り返される傾向にあります。
■ 生産拠点の災害・トラブル
国内外の製造拠点で火災やトラブルが起きると、一気に供給が減少し、需要過多による価格上昇が発生します。
過去の代表的な値上げ事例
例えば2023年春、積水化学・クボタシステム・アロン化成など主要メーカーが**一斉に塩ビ管・継手の値上げ(平均10〜15%)**を発表。背景には、ナフサ価格の上昇や輸送費の上乗せ、そして人件費増加がありました。
これにより、工務店やリフォーム業者、電気工事会社などの現場では、「見積もりのやり直し」「予算オーバーで仕様変更」などの影響が広がりました。
値上げが予告されたとき、現場でできること
■ 1. 事前に値上げ情報をキャッチする
まず最も大事なのは、メーカーや商社からの値上げ案内をいち早くつかむことです。
塩ビ管の値上げは、通常1か月〜2か月前に予告されます。メーカー公式サイトや、資材商社のFAX・メール、業界紙(建設通信新聞など)でアナウンスされることが多いので、普段から情報収集を習慣化することが重要です。
■ 2. 値上げ前に「まとめ買い」して備蓄する
実際の現場で最も効果があるのが、「まとめ買いによる備蓄」です。
例えば10月1日から値上げがある場合、9月中に必要数量を読み切り、前倒しで数現場分の塩ビ管を確保しておくことで、大きなコスト差が出ます。
▼ 現場で多い備蓄パターン:VU100の積み上げ


実際の現場では、特に**VU100(排水管としてよく使われるサイズ)**のまとめ買いが多く見られます。
- 敷地内にVU100を200本以上まとめて搬入
- パレットに積み上げ、ラップで固定して雨対策
- 継手類もサイズ別に番線で束ねて保管
- 使用予定を工程ごとにリスト化して、取り崩しを管理
VU管はかさばるものの軽量なので、敷地さえあれば「立て積み・横積み」がしやすく、大量ストックに向いている素材です。
値上げ後には、同じVU100でも1本あたり100円以上の差が出るケースもあり、まとめ買いで数万円〜十数万円の差額になることもあります。
備蓄の様子を撮影した写真(例:現場にずらりと並んだVU100管のパレット)は、ブログの説得力を高める素材としてもおすすめです。
またパイプは肩で担ぐため肩サポーターもおすすめです
■ 3. 代替商品は現実的に難しいケースが多い
塩ビ管の値上がりに対して、代替材料を検討するという声もありますが、実際には現実的でないケースが多いです。
例えば以下のような管材が候補に挙がることもありますが:
代替候補 | 特徴 | 課題 |
---|---|---|
PF管(電設用) | 柔軟で狭所に強い | 単価が高い/用途が限定的 |
ポリエチレン管(PE) | 軽量で埋設向き | 専用継手や施工技術が必要/高コスト |
鉄管(SGP) | 高強度 | 加工が大変・価格も高い |
どれも塩ビ管よりも高価で、施工上のハードルも高くなるため、コスト対策としての「代替」は現実的ではありません。
特に一般建築・住宅・設備分野では、塩ビ管の使用が前提になっているため、仕様変更そのものが難しいケースが多いです。
■ 4. 見積・契約書の金額調整に備える
見積・契約の段階で「材料費の変動があるかもしれない」という前提を共有しておくと、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
例えば以下のような文言を見積書に含めるのが有効です:
※材料費は市況により変動する可能性があり、大幅な価格改定時には再見積もりをお願いする場合があります。
現場で価格交渉や契約変更を行いやすくなるため、発注者との信頼関係の維持にもつながります。
まとめ|塩ビ管の値上げには早めの行動と情報収集が鍵
塩ビ管の価格は、原材料・為替・物流・社会情勢といった外部要因で大きく動きます。特にVU100などよく使われるサイズは価格差の影響が大きく、**「備えがコストに直結する時代」**に突入しています。
- 値上げ情報をいち早くキャッチ
- 早めの発注・まとめ買いで差益を確保
- 倉庫や敷地を活用したVU100の備蓄を検討
- 見積書・契約書で価格変動に備える
こうした基本的な対応を徹底することで、値上げ時期でも現場の利益をしっかり守ることができます。
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