水道管の老朽化が社会問題となる中で、次世代の管材として注目されているのが「ポリエチレン管(PE管)」です。従来使用されてきたダクタイル鋳鉄管、塩化ビニル管(VP管)、鋼管などと比較して、腐食しない・耐震性が高い・長寿命といった大きなメリットがあり、全国の水道事業で採用が進んでいます。
本記事では、PE管の特徴・性能・耐候性、そして主要メーカーの製品情報まで詳しくご紹介します。

■ ポリエチレン管(PE管)とは?
PE管はポリエチレン樹脂(HDPEやPE100)を原料にした水道管で、特に「水道配水用ポリエチレン管(HPPE管)」は、配水本管や給水管などに広く使われています。中でも、PE100グレードは最新の高密度ポリエチレンで、耐久性や柔軟性に優れています。
■ ポリエチレン管の主な特徴
【1. 腐食しない・耐薬品性が高い】 ポリエチレンは金属と違い、サビや腐食が一切ありません。土壌中の化学物質や迷走電流による劣化もなく、水質への影響も少ないのが特徴です。
【2. 柔軟性と耐震性】 可とう性が高く、地盤沈下や地震などの地盤変動にもしなやかに対応。破損や漏水リスクを大幅に低減できます。
【3. 優れた耐摩耗性・耐久性】 ポリエチレン管は摩耗にも強く、他の管材よりも劣化が遅いという試験結果が報告されています。適切に施工すれば、50年以上の使用も可能です。
【4. 高寿命化】 PE100などの高性能素材では、100年の耐用年数を目指した設計・検証が進行中。実際に30年以上埋設されたPE管に劣化が見られない事例も確認されています。
【5. 通水性能の維持】 内面が非常に平滑で、長期間にわたって流量の維持が可能です。汚れの付着や内部摩耗も少なく、通水効率が高いまま保たれます。
【6. 優れた施工性】 軽量で柔軟なため、現場での運搬・加工・曲げ施工がしやすいです。EF接合(電気融着)により接合部が一体化し、漏水のリスクも大幅に低減します。
■ 耐候性と屋外利用のメリット
ポリエチレン管には、カーボンブラックという紫外線吸収材が添加されており、屋外の直射日光による劣化を防ぐ構造になっています。これにより、露出配管も可能となり、従来の塩ビ管や鋳鉄管に比べて大きな優位性を発揮しています。
■ ポリエチレン管 vs 従来管材 比較表
特性 | PE管(PE100等) | 鋳鉄管・塩ビ管など |
---|---|---|
腐食 | しない | あり(サビ・腐食リスク) |
耐震性 | 高い(可とう性あり) | 低い(割れやすい) |
耐摩耗性 | 非常に高い | 管種によるが摩耗しやすい |
耐用年数 | 50年以上(100年検証中) | 20〜40年程度 |
通水性能 | 高い(内面平滑で詰まりにくい) | 経年で流量低下しやすい |
施工性・維持管理 | 軽量・施工が簡単 | 継手が多く施工に手間がかかる |
■ 主要メーカーと製品ラインアップ
【積水化学工業】 業界大手。高性能PE管「エスロハイパーJW」「AW」などを展開。耐震性・耐候性・接合信頼性が高く、多くの自治体で採用されています。
【クボタケミックス】 「KUBOTA HPPE管」シリーズを展開。豊富な継手とEF機器も揃っており、施工性が高いと評価されています。
EF接合の原理と手順
配水ポリエチレン管の**EF接合(エレクトロフュージョン接合)**は、管と管継手を一体化させるための主要な接続方法です。
- 構造と仕組み
- 継手(ソケット等)の内面に電熱線が埋め込まれています。
- 管端(挿し口)を継手(受口)に差し込み、専用コントローラで電熱線に通電します。
- 電熱線が発熱し、継手内面と管外面の樹脂が加熱・溶融されます。
- 溶融した樹脂が膨張し、管と継手が一体化して強固に接合されます。
- 具体的な施工手順
- 管を所定の長さ・角度で切断し、端面をスクレーパー等で削り、清掃します。
- 差し込み長さをマーキングし、EFソケットに管を挿入。
- 専用クランプで固定し、コントローラを継手の端子に接続。
- 製品バーコード等から融着条件を読み取り、通電・加熱を開始。
- インジケータが押し上げられ、融着完了を確認。
- 規定時間冷却した後、クランプを外して完了です。
- 特徴・利点
- **一体化構造**となり、抜け・漏水が発生しにくい。
- 引張・曲げ・偏平・圧縮などの各種試験で高い接合強度が確認されています。
- 雨天や水場での施工時は、接合部や機器が濡れないよう雨よけや排水対策が必要です。水濡れを防げない場合は、メカニカル継手を用いることもあります。
EF接合に必要な主な機材
- EF継手(ソケット、チーズ、ベンド等)
- 専用コントローラ
- クランプ(固定具)
- スクレーパー・パイプカッター・清掃用具
注意点
- 施工時の水濡れ厳禁(雨天時や地下水位の高い現場では特に注意)。
- 冷却時間の厳守(冷却不足は接合不良の原因)。
- 施工者の技術講習受講が必須。
EF接合は、配水用ポリエチレン管の高い耐久性・耐震性を支える重要な接合技術です。
■ 結論:PE管は次世代のインフラを支える主力素材
地震・腐食・摩耗に強く、さらに施工性・流量性能にも優れたポリエチレン管は、従来管材に代わる”次世代スタンダード”といえる存在です。高密度PE(PE100)を使ったHPPE管は、災害対策や老朽管更新に最適で、今後さらに全国的に普及が進むと考えられます。
今後のインフラ整備・改修工事において、PE管の正しい知識と選定眼がますます重要になるでしょう。

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