空調・換気設備工事で使用されるダクトにはさまざまな種類がありますが、中でも代表的なのが「スパイラルダクト」「フレキダクト」「サイレントフレックス」です。それぞれに特徴や用途が異なり、現場の状況や目的によって使い分けられています。この記事では、これら3つのダクトの違いと選び方について、施工者目線で分かりやすく解説します。
スパイラルダクトとは?
スパイラルダクトとは、亜鉛メッキ鋼板などの金属板を螺旋状に巻いて成形された円筒形の金属製ダクトです。強度が高く、曲がりや分岐にはエルボやチーズなどの金属継手を使用します。
特徴
- 強度・耐久性に優れる
- 直線部分の施工がしやすく、見た目もスマート
- 主に工場やオフィスの天井裏、店舗などの空調換気に使われる
- 天井露出で「見せるダクト」としても人気
- 定尺は基本4m
デメリット
- 曲がり部分に継手が必要で柔軟性がない
- 長さ調整にはカット作業が必要(メーカーに事前に長さ指定すればカット品製作可能)
- 素手で扱う場合、パイプの先端などは触ると危険なので注意が必要(手袋をすることを推奨します)
フレキダクト(フレキシブルダクト)とは?
フレキダクトは、内部に金属製スパイラル線を使い、それをアルミ箔やフィルムで包んだ柔軟性の高いダクトです。
特徴
- 自由に曲げられるため、複雑なルートにも対応可能
- 軽量で施工が非常に簡単
- 最初は1mで伸ばすと4mになる
- 一般住宅や小規模店舗など、スペースが限られた場所に最適
デメリット
- 金属製スパイラルに比べて耐久性・気密性に劣る
- 長距離配管や高圧風量には向かない
サイレントフレックスとは?
サイレントフレックス(サイレントフレキシブルダクト)は、フレキダクトの一種でありながら遮音性能を強化したダクトです。内層と外層の間にグラスウールや不織布を仕込んでおり、ダクト内の風切り音や騒音を抑えることができます。
特徴
- 防音性が非常に高い
- エアコンや送風機の騒音を抑えたい場合に有効
- 医療施設、会議室、ホテルなど静音環境を求める空間に適する
- 長さは10mなど長い単位でも注文できる
デメリット
- フレキに比べてやや高価
- 太さや曲げ半径が大きくなりがち
比較一覧表
項目 | スパイラルダクト | フレキダクト | サイレントフレックス |
---|---|---|---|
柔軟性 | ×(硬い) | ◎(非常に柔軟) | ◎(柔軟) |
強度・耐久性 | ◎ | △ | △〜○ |
施工性 | ○ | ◎ | ○ |
防音性 | △ | △ | ◎ |
主な用途 | 工場・天井露出・直線配管 | 住宅・狭所配管 | 医療・会議室・静音エリア |
選び方のポイント
- 空間の制約があるか?
- 狭い・入り組んだ経路 → フレキまたはサイレントフレックス
- 騒音を抑えたいか?
- 静音空間が必要 → サイレントフレックス
- 長距離・大風量が必要か?
- 高耐久・高気密が必要 → スパイラルダクト
- 見せるデザインにしたいか?
- 天井露出配管を考慮 → スパイラルダクトがおすすめ
まとめ
スパイラルダクト、フレキダクト、サイレントフレックスは、それぞれ明確な用途と特性があります。施工現場や使用目的に応じて、最適なダクト材を選ぶことが快適な空調・換気設備の構築につながります。
特に近年は、「見せる配管」や「静音性重視」といったニーズも増えており、これらのダクトの使い分けがますます重要になってきています。
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