給排水管とは
給排水管は、建物や施設において「水を供給する」給水系統と、「使用した水を排出する」排水系統の配管を総称した言葉です。
住宅、集合住宅、オフィスビル、工場、公共施設など、ほぼすべての建物で欠かせない設備です。
- 給水管…水道水や井戸水などを蛇口や給湯器まで運ぶ配管
- 給湯管…給湯器で温めたお湯を各水栓まで送る配管
- 排水管…台所・浴室・トイレなどからの生活排水を排水桝や下水管まで導く配管
給排水管は用途ごとに素材や規格が異なり、設置環境や法令に適合したものを選定する必要があります。
以下では、種類ごとの特徴と選び方を詳しく解説します。
給水管の種類
塩ビ管(VP管・HIVP管)
塩化ビニル樹脂製の配管で、軽量・耐食性に優れ、加工もしやすいのが特徴です。
- VP管…一般給水用。耐圧性があり、地中埋設や露出配管に使用
- HIVP管…高耐衝撃性タイプ。外圧や低温に強く、寒冷地での施工にも向く
メリット
- 軽くて切断・接着が容易
- 錆びない
- 安価で入手性が高い
デメリット
- 高温に弱い(60℃以上で変形の恐れ)
- 紫外線で劣化しやすい(屋外露出の場合は塗装やカバー必須)
ライニング鋼管(VA・VB・VD)
鋼管の内面に樹脂やセメントモルタルをコーティングした配管で、錆びにくく耐久性があります。
- VA管…内面に樹脂ライニング(給水用)
- VB管…内面樹脂+外面塗装(耐食性向上)
- VD管…内面樹脂+外面亜鉛めっき(屋外・露出向け)
メリット
- 高い耐圧性能
- 錆びにくい構造
- 長期耐用年数(30年以上)
デメリット
- 鋼管なので重量がある
- ねじ切りや溶接が必要で施工性は塩ビ管より劣る
ポリエチレン管(PE管)
柔軟で軽く、耐食性に優れた樹脂製の給水管です。近年は水道本管や宅地内引込管として普及が進んでいます。
メリット
- 錆びない、腐食しない
- 曲げ加工が容易
- 接続が差し込み式や圧着式で施工が早い
デメリット
- 高温に弱い
- 外傷に注意が必要(衝撃や鋭利な物での損傷)
排水管の種類
塩ビ排水管(VU管・VP管)
- VU管…薄肉で排水専用。軽量で加工が容易
- VP管…厚肉で耐圧性あり。排水兼給水用途も可能
メリット
- 安価で施工が簡単
- 軽量で持ち運びやすい
- 耐食性が高い
デメリット
- 高温排水(80℃以上)には不向き
- 紫外線劣化のため屋外では保護が必要
耐火二層管
内管が塩ビ、外管が耐火材で覆われた配管。火災時に延焼を防ぐ役割があります。
主なメーカー
- フネンアクロス(未来工業)
- ケイプラ(積水化学)
- 過去にはエーアンドエー(浅野)、バクマトミジも製造
メリット
- 建築基準法の耐火性能を満たす
- 接続が簡単(差し込み式)
デメリット
- 通常の塩ビ管より高価
- 重量が増す
鋳鉄管・ダクタイル鋳鉄管
重量のある金属管で、高い耐久性と遮音性を持つため、集合住宅の排水立管などに多用されます。
メリット
- 優れた遮音性
- 高強度で衝撃に強い
- 長寿命
デメリット
- 非常に重く、施工は人手や機械が必要
- 錆びやすい(防食処理必須)
給湯管の種類
耐熱塩ビ管(HTVP)
高温水(80℃程度)に対応した塩ビ管。給湯配管で使用されます。
架橋ポリエチレン管(PEX)
柔軟で耐熱性・耐圧性が高く、最近の住宅で主流になりつつある配管。
銅管
古くから使われている金属配管で、耐熱性・耐圧性に優れます。
管材の選び方のポイント
- 耐久性:長期使用に耐える素材か
- 施工性:現場条件で作業しやすいか
- コスト:初期費用とランニングコストのバランス
- 法令適合性:JIS規格・水道法・消防法などを満たすか
よく使う接続方法
- 接着式(塩ビ管)
- ねじ込み式(鋼管)
- 差し込み式(PE管・耐火二層管)
- 圧着式(銅管・PE管)
施工上の注意点
- 屋外露出配管は紫外線対策を行う
- 冷水配管は結露防止、温水配管は断熱必須
- 寒冷地は凍結防止ヒーターや保温材を使用
まとめ
給排水管は素材・規格・接続方法によって適した用途が異なります。
施工条件や法令を確認し、最適な管材を選定することが重要です。
また、耐久性だけでなく、施工性やメンテナンス性も考慮することで、長期的に安心できる配管システムが構築できます。
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