住宅の給湯設備にはさまざまな種類がありますが、その中でも特に普及しているのがエコキュートと電気温水器です。どちらも「電気」を使ってお湯を沸かす点では共通していますが、その仕組みや特徴は大きく異なります。この記事では、両者の違いをわかりやすく解説し、配管工事や導入コストまで含めて詳しく比較します。リフォームや新築時に「どちらを選ぶべきか」で迷っている方の参考になれば幸いです。
エコキュートと電気温水器の基本的な仕組みの違い
まずは両者の「お湯をつくる仕組み」から見ていきましょう。
- 電気温水器
電気温水器は、タンク内に設置された電熱ヒーターで水を直接加熱します。仕組みは非常にシンプルで、電気ポットを大型化したものと考えるとわかりやすいでしょう。そのため構造が単純で壊れにくいというメリットがあります。

- エコキュート
エコキュートは、ヒートポンプ技術を利用した給湯器です。エアコンの室外機のようなヒートポンプユニットが空気中の熱を取り込み、圧縮して高温化させます。その熱を熱交換器を通して水に伝えることでお湯をつくります。空気中の熱を利用するため、少ない電気で効率よくお湯を沸かせるのが特徴です。

エコキュートと電気温水器の比較表
項目 | エコキュート | 電気温水器 |
---|---|---|
お湯を作る仕組み | 空気中の熱を利用する「ヒートポンプ方式」 | タンク内の電熱ヒーターで水を直接加熱 |
エネルギー効率 | 使用する電気の約3倍以上の熱エネルギーを生み出せる | 電気をそのまま熱に変換するため効率は低い |
ランニングコスト | 電気代が安く経済的 | エコキュートに比べ電気代が高い |
初期費用 | 本体・ヒートポンプユニットで高額 | 構造がシンプルで安価 |
設置スペース | タンク+ヒートポンプユニットが必要 | タンクのみで省スペース |
ランニングコストの違い
エコキュートの最大のメリットは、省エネ性能の高さです。大気中の熱を取り込むため、使用する電気の3倍以上の熱エネルギーを生み出すことが可能です。結果として、電気温水器に比べると電気代は約1/3程度まで抑えられるケースもあります。
一方で、電気温水器は効率が低いため、ランニングコストが高くなりがちです。初期費用は安いものの、長期的に見ると光熱費が大きな負担になる可能性があります。
初期費用・設置費用の違い
- エコキュート
本体価格が高く、さらにヒートポンプユニットと貯湯タンクの2つを設置する必要があります。そのため、初期費用は一般的に電気温水器よりも高額になります。また、設置スペースや基礎工事、追加の配管工事も必要になる場合があります。 - 電気温水器
シンプルな構造のため、本体価格は安価です。設置もタンクのみで済むため、施工費用も比較的抑えられます。限られた予算で導入したい方に向いています。
配管工事の違い(施工者向けポイント)
給湯器の選択では、本体の価格やランニングコストだけでなく「配管まわり」にも違いがあります。
- 電気温水器の場合
必要なのは給水管と給湯管がメイン。施工がシンプルで、特別な部材は少なく済みます。 - エコキュートの場合
- 給水管・給湯管に加え、追いだき配管やヒートポンプとの接続管が必要。
- 凍結防止のための保温材施工が重要。寒冷地ではヒーター内蔵の配管部材を使うこともあります。
- タブチの「エコパック」など、配管をまとめた専用部材が利用されるケースが多い。
施工者にとっては、エコキュートの方が工事内容が複雑になる分、配管資材や施工スキルが求められます。
設置スペースの違い
- エコキュート
貯湯タンクに加え、室外にヒートポンプユニットを置く必要があります。ある程度のスペースが必要で、狭小住宅や設置環境によっては導入が難しいケースもあります。 - 電気温水器
タンクのみの設置で済むため、省スペース。集合住宅や限られたスペースでの設置に向いています。
どちらを選ぶべきか?
両者にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、家庭の状況や優先順位によって選び方が変わります。
エコキュートがおすすめの人
- 初期費用がかかっても、月々の光熱費を抑えたい人
- 省エネ性能を重視する人
- 環境負荷の少ない生活を目指したい人
電気温水器がおすすめの人
- 初期費用をできるだけ抑えたい人
- 設置スペースが限られている人
- 機器のシンプルさや耐久性を重視する人
エコキュートの修理と交換の目安:買い替え前に知っておきたいポイント
エコキュートは省エネ性能に優れた給湯器として多くの家庭に導入されていますが、精密機器であるため不具合や経年劣化は避けられません。いざ調子が悪くなったとき、「修理すべきか」「交換すべきか」で迷う方も多いのではないでしょうか。この記事では、エコキュートの修理・交換時期の目安や、判断のポイントを解説します。
エコキュートの設計寿命は約10年
各メーカーが定める設計標準使用期間(想定寿命)は約10年とされています。これは安全に使用できる目安であり、10年を超えると故障リスクが高まり、修理が難しくなることがあります。
- 10年未満:修理対応が可能なケースが多い
- 10年以上:部品が入手できない、別の箇所も故障しやすいなど、交換が推奨されるケースが多い
使用年数が10年未満の場合
エコキュートの使用年数が10年未満で不具合が生じた場合は、まずメーカーに修理可能か問い合わせましょう。メーカーのサポート窓口に症状やエラーコードを伝えることで、修理可否や概算費用を確認できます。
ただし、以下のようなケースでは修理よりも交換を検討するのがおすすめです。
- 頻繁に不具合が発生している
- 修理費用が高額(例:5万円以上)になる
- 部品の在庫がすでに終了している
修理費用を把握したうえで、交換業者から見積を取って比較することをおすすめします。
使用年数が10年以上の場合
エコキュートを10年以上使用している場合、不具合が出たら交換を検討するのが基本です。理由は以下の通りです。
- 修理部品が供給終了している可能性が高い
- 修理しても他の箇所がすぐ壊れるリスクがある
- 経年劣化により省エネ性能が低下している
特に15年以上経過している場合は修理が難しいケースが多いため、交換に切り替えた方が長期的にメリットが大きいと言えます。
故障かな?と思ったらエラーコードを確認
エコキュートに不具合が起きると、リモコン画面にエラーコードが表示されることがあります。エラーコードを確認することで、不具合の原因や対応方法がわかる場合があります。
三菱電機(MITSUBISHI)の例
- Uから始まるエラー:断水、凍結、ふろ循環アダプターの目詰まりなど
- Hから始まるエラー:貯湯タンク、ヒートポンプ、リモコンの組み合わせに起因する不具合
※機種や発売年によってエラーコードの意味は異なるため、詳細は取扱説明書やメーカーの公式情報をご確認ください。不安な場合は、エラーコードを控えてメーカーに問い合わせるのがおすすめです。
まとめ
エコキュートと電気温水器は、どちらも電気を使った給湯器ですが、仕組みやコスト構造が大きく異なります。
- エコキュートは省エネ・光熱費削減に優れ、長期的に経済的。ただし初期費用と設置スペースがネック。
- 電気温水器は初期費用と施工のしやすさが魅力。ただし光熱費は高め。
選ぶ際には、「導入コスト」と「ランニングコスト」の両方を比較し、家庭のライフスタイルに合った方を選ぶことが大切です。施工面では、エコキュートは配管工事が複雑になるため、信頼できる施工業者に依頼するのが安心です。
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