リケンHI-LAマルチ:鋼管・塩ビ管・ポリ管を1つで繋ぐ革新的継手

継手類
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配管工事の常識を変える、三管種兼用メカニカル継手のすべて

更新日: 2025-12-06

配管工事において、異なる種類の管(異種管)を接続する作業は、これまで多くの手間と専門知識を要する複雑な工程でした。管種ごとに専用の継手を用意し、時には特殊な加工も必要とされ、現場の効率化を妨げる一因となっていました。この長年の課題を解決すべく、株式会社リケンが開発したのが「HI-LAマルチ」です。

HI-LAマルチは、長年にわたり水道局やガス会社などで高い評価を得てきた「LAカップリング」シリーズの最新モデル鋼管、硬質塩化ビニル管(塩ビ管)、ポリエチレン管(ポリ管)という主要な3つの管種を、原則として部品交換なしで兼用できる画期的なメカニカル継手です。本記事では、このHI-LAマルチの特長、構造、施工方法から製品ラインナップまで、その全貌を徹底的に解説します。

目次

HI-LAマルチとは? LAカップリングシリーズの革新

HI-LAマルチは、1957年の誕生以来、半世紀以上にわたって配管業界を支えてきたリケンの「LAカップリング」シリーズに属する製品です。LAカップリングは、管にねじ切り加工をすることなく接合できる『メカニカル継手』のパイオニアとして、その信頼性と高い評価を確立してきました。

従来の「HI-LA」継手は、管種ごとに部品を交換する必要がありましたが、「HI-LAマルチ」はこれを改良し、鋼管・塩ビ管・ポリ管の三管種を兼用できるタイプとして開発されました。これにより、現場での部品管理が大幅に簡素化され、作業効率が飛躍的に向上します。特に、異なる管種が混在する改修工事などでは、その真価を最大限に発揮します。

製品は、耐食性に優れた亜鉛めっき品と、さらに防食性能を高めたエポキシ樹脂コート品(コマコート)が用意されており、用途に応じて選択可能です。

HI-LAマルチの4大特長

HI-LAマルチが多くの現場で支持される理由は、その卓越した機能性にあります。ここでは、その代表的な4つの特長を詳しく見ていきましょう。

1. 驚きの汎用性!3管種の接合が容易に

HI-LAマルチ最大の特長は、その圧倒的な汎用性です。鋼管同士の接続はもちろんのこと、「鋼管と塩ビ管」「鋼管とポリ管」「塩ビ管とポリ管」といった異種管の接合も、原則として部品を組み替えることなく、1つの継手で完結できます。これにより、在庫管理の負担軽減や、急な仕様変更にも柔軟に対応できるという大きなメリットが生まれます。

HI-LAマルチによる異種管接合の例
鋼管、ポリ管、塩ビ管。材質の異なる管もHI-LAマルチならスムーズに接合可能。

※【重要】汎用性の例外について

HI-LAマルチは非常に高い汎用性を誇りますが、一部のサイズや管種では、専用部品への交換や追加部品が必要となります。施工前に必ず確認してください。

  • 塩ビ管の場合:呼び径 13, 25, 30 の塩ビ管を接合する際は、塩ビ管専用タイプへの部品組み換えが必要です。
  • ポリエチレン管の場合:呼び径 30以上 のポリ管を接合する際は、管の変形を防ぎシール性を確保するため、専用部品「インコア」を管端に挿入する必要があります。

出典: リケンLAカップリングカタログ(P.3.4)

2. 安全・確実な施工性

HI-LAマルチの施工は非常にシンプルです。管の端をそのまま差し込める「ぼうず管」に直接接合できるため、ねじ切りなどの面倒な前加工は一切不要です。ナット、ロックリング、ワッシャ、ゴムパッキンといった構成部品を目で確認しながら装着できるため、施工ミスが起こりにくく、誰でも安全かつ確実に作業を進めることができます。

施工方法も従来のHI-LA型と変わらないため、すでにLAカップリングを使用している作業者であれば、戸惑うことなくスムーズに導入することが可能です。

HI-LAマルチの施工風景
部品の装着状態を確認しながら作業できるため、確実な施工が可能です。

3. 補修・改修工事の切り札

老朽化した配管系統のリニューアルや、既存の鋼管から塩ビ管・ポリ管へ切り替えるといった改修工事において、HI-LAマルチはその能力を最大限に発揮します。切断した管にそのまま接合できるため、作業時間を大幅に短縮。また、前述の通り異種管接合が容易なため、新旧の配管システムをスムーズに接続できます。これにより、工期の短縮とコスト削減に大きく貢献します。管種の切り替えや部分的な補修など、改修工事の様々なシーンで迅速に対応できます。

4. 優れた可とう性:振動・伸縮・芯ずれに対応

LAカップリングシリーズに共通する特長として、構造的な「可とう性(柔軟性)」が挙げられます。ゴムパッキンによるシール構造は、配管の振動や温度変化による伸縮を吸収する能力に優れています。これにより、ポンプ周りや交通量の多い道路下の埋設管など、振動が発生しやすい場所でも安心して使用できます。

また、多少の芯ずれ(軸方向のズレ)や角度の振れにも対応できるため、完全に直線が出ていない配管でも施工が可能です。この柔軟性は、ねじ込み式の継手にはない大きなアドバンテージです。

HI-LAマルチの構造と構成部品

HI-LAマルチの優れた性能は、その緻密に設計された構造によって実現されています。ナットを締め付けることで、まずロックリングが管に食い込み、管の抜けを防止します。さらに締め込むと、ゴムパッキンが圧縮され、管と継手本体の間を確実にシールします。この二段構えのメカニズムが、高い信頼性を生み出しています。

主な構成部品は以下の通りです。

  • 本体 (Body): 継手の中心となる部分。材質は黒心可鍛鋳鉄。
  • ナット (Nut): 本体に部品を締め付け、固定するための部品。材質は黒心可鍛鋳鉄。
  • ロックリング (Lock Ring): 抜け出し防止機能を持つ重要な部品。管表面に食い込み、強力に固定します。材質は鋼。
  • ワッシャ (Washer): ゴムパッキンを均一に圧縮するための部品。材質は鋼。
  • ゴムパッキン (Gasket): 流体をシールする心臓部。標準ではNBR(ニトリルゴム)が使用されますが、流体や温度に応じてEPDMやACMも選択可能です。
  • インコア (Incore): ポリエチレン管30A以上で使用する専用部品。管の内部から形状を保持し、確実なシールを補助します。材質はPOM(ポリアセタール)。

適用管種と使用圧力

HI-LAマルチが対応する主な管種と、それぞれの使用圧力は以下の通りです。使用条件を誤ると重大な事故につながる可能性があるため、必ず規定の範囲内でご使用ください。

適用管規格HI-LAマルチの適用最高使用圧力 (液体)最高使用圧力 (気体)
水配管用亜鉛めっき鋼管JIS G 3442 (SGPW)1.0MPa
配管用炭素鋼鋼管JIS G 3452 (SGP)1.0MPa0.3MPa
水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管JWWA K 116 (VA・VB)1.0MPa
水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管JWWA K 132 (PA・PB)1.0MPa
硬質塩化ビニル管JIS K 6741 (VPのみ)1.0MPa
水道用硬質塩化ビニル管JIS K 6742 (VP・HIVP)0.75MPa
水道用ポリエチレン二層管JIS K 6762 (1種・2種)0.75MPa
一般用ポリエチレン管JIS K 6761 (1種・2種)● (1種のみ) ※管の使用圧力範囲内

※一般用ポリエチレン管(1種)は、65Aおよび80Aのサイズに限ります。

HI-LAマルチの施工手順

HI-LAマルチの施工は簡単ですが、正しい手順を守ることが性能を最大限に引き出し、安全を確保する上で非常に重要です。

1. 管の切断と面取り

パイプカッターやのこ盤を使用し、管軸線に対して直角に管を切断します。切断後、管の切断面内外周のバリをヤスリなどで丁寧に取り除き、軽く面取りを行います。バリが残っているとゴムパッキンを傷つけ、漏水の原因となるため、この作業は確実に行ってください。

2. 部品の装着

正しい順序で部品を装着し、規定のA寸法を確保することが重要です。ポリ管30A以上ではインコアを装着します。

継手を分解し、「ナット → ロックリング → ワッシャ → ゴムパッキン」の順で管に装着します。このとき、ゴムパッキンの装着位置(管端からのA寸法)が非常に重要です。カタログに記載された規定のA寸法を必ず守ってください。

3. ナットの締付け

部品を装着した管を本体に挿入し、ナットを手で仮締めします。その後、パイプレンチを使用し、規定のトルクで締め付けます。過大なトルクはゴムパッキンを損傷させる恐れがあるため、トルクレンチを使用するか、カタログ記載の目安(レンチの呼び×加える力)を参考にしてください。

呼び (A)呼び (B)標準締付けトルク N·m (kgf·m)
151/269 (7)
203/478 (8)
25198 (10)
321 1/4118 (12)
401 1/2157 (16)
502196 (20)
652 1/2225 (23)
803245 (25)

※塩ビ管・ポリ管の場合は締付けトルクが異なります。詳細はカタログをご確認ください。

出典: リケンLAカップリングカタログ(P.11)

4. 特殊なケース:ロックリングの追い込み

配管系統の最終接続箇所など、両端の管がすでに固定されていて動かせない場合は、「ロックリングの追い込み」という特別な作業が必要です。

HI-LAマルチはナットを締めると管を継手内部に引き込みながらシールする構造のため、管が動かせないとゴムパッキンが十分に圧縮されず、シール不良を起こす可能性があります。これを防ぐため、ナットを軽く締めた後、短管などを当ててハンマーでロックリングの端を軽く叩き込み、再度ナットを締め付ける作業を2~3回繰り返します。

ロックリングの追い込み作業
両端固定配管の場合は、確実なシール性を確保するために「追い込み作業」が必須です。

製品ラインナップ

HI-LAマルチは、基本的な直管接続用の「ソケット」に加え、様々な配管レイアウトに対応できるよう豊富なアイテムが揃っています。

この他にも、径違いソケット(RS)や径違いチーズ(RT)など、多彩なバリエーションが用意されています。詳細な寸法やラインナップについては、メーカーのカタログをご確認ください。

まとめ

リケンの「HI-LAマルチ」は、単なる配管継手ではなく、配管工事の効率、安全性、信頼性を根本から向上させる革新的なソリューションです。その主な利点を改めてまとめます。

  • 三管種兼用:鋼管、塩ビ管、ポリ管を原則部品交換なしで接続可能。異種管接合も容易。
  • 簡単・確実な施工:ねじ切り不要で、部品を確認しながら安全に作業できる。
  • 改修工事に最適:スピーディーな施工で、工期短縮とコスト削減に貢献。
  • 高い柔軟性:振動や伸縮を吸収し、芯ずれにも対応。
  • 豊富な実績:半世紀以上にわたるLAカップリングシリーズの信頼と実績を継承。

新設工事から補修・改修工事まで、あらゆる配管シーンでその価値を発揮するHI-LAマルチ。配管業務に携わるすべての方にとって、強力な味方となることは間違いないでしょう。次回の配管計画の際には、ぜひこの『HI-LAマルチ』の採用をご検討ください。

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