公開日:2025年11月23日
水道の給水ラインや空調・衛生配管において、硬質塩化ビニル管(塩ビ管)は広く利用されています。しかし、従来のバルブ接続工事は、バルブソケットやシールテープ、複数の工具を必要とし、手間と時間がかかるだけでなく、施工品質が作業者の熟練度に左右されるという課題がありました。
こうした現場の課題を解決すべく、バルブ製造の老舗である東洋株式会社が開発したのが、鉛フリー青銅ソケット型「えん結び®」バルブです。この製品は、塩ビ配管工事のあり方を根本から見直し、〝利便性〟ならぬ〝利弁性〟を追求した画期的なソリューションとして注目を集めています。
管端部に簡単に取り付く『えん結び®』は、塩ビ配管の〝利弁性〟を追求しました。
本記事では、「えん結びバルブ」が持つ革新的な特長、詳細な製品仕様、信頼性を裏付ける性能データ、そして正しい施工方法まで、その全貌を徹底的に解説します。

「えん結び」が実現する4つの革新的な特長
「えん結びバルブ」は、従来の施工方法が抱えていた課題を解決するために、4つの大きな特長を備えています。ここでは、従来の施工との比較を交えながら、そのメリットを一つずつ詳しく見ていきましょう。
特長1:バルブソケット不要! 施工が劇的に簡素化
最大の特長は、バルブ本体に硬質塩化ビニル管を直接接合できるTSソケットを内蔵している点です。これにより、従来必要だった「金属おねじ付バルブソケット」や、ねじ部の水密性を保つための「シールテープ」が一切不要になります。また、ソケットを締め付けるための「モンキーレンチ」などの工具も必要ありません。
【従来の施工】
バルブ+金属おねじ付バルブソケット+シールテープ+パイプレンチ+モンキーレンチ
【えん結びの場合】
えん結びバルブ これだけでOK!
部品点数と使用工具が大幅に削減されることで、施工時間が短縮されるだけでなく、シールテープの巻き方による漏水リスクや、締め付けトルクの管理といった熟練度を要する作業から解放され、誰でも安定した品質の施工が可能になります。
特長2:面間寸法が3割減! 省スペースを実現
バルブソケットが不要になることで、配管全体の面間寸法(バルブ両端の接続面間の距離)が大幅に短縮されます。製品カタログによれば、バルブソケット使用時と比較して約3割の短縮が可能です。
この省スペース性は、壁際や天井裏、パイプシャフト内など、作業スペースが限られる場所での施工において絶大な効果を発揮します。よりコンパクトな配管設計が可能となり、設計の自由度向上にも貢献します。
特長3:パイプ接合部が強い! 金属バルブが樹脂を保護
「えん結びバルブ」は、内蔵された特殊なTSソケットが、堅牢な金属(鉛フリー青銅)製のバルブ本体に覆われる構造になっています。これにより、外部からの衝撃や応力に対して、樹脂製の接合部が直接晒されるのを防ぎます。
この保護構造により、接合部の機械的強度が向上し、配管全体の耐久性と信頼性が高まります。特に、振動や経年変化が懸念される箇所においても、長期にわたる安定した性能を期待できます。
特長4:環境にやさしい! 分別リサイクル可能な構造
環境負荷低減への配慮も「えん結びバルブ」の重要な特長です。バルブ本体の金属部分と、内蔵されている樹脂製のソケット部分は、分解可能な構造になっています。これにより、将来的に配管を撤去・更新する際に、金属と樹脂を容易に分別し、それぞれをリサイクルに回すことが可能です。
持続可能な社会の実現が求められる現代において、製品ライフサイクルの終わりまで考慮されたエコフレンドリーな設計は、大きな付加価値と言えるでしょう。
製品ラインナップと詳細仕様
「えん結びバルブ」は、用途に応じて選択できるよう、ゲートバルブとボールバルブの2種類がラインナップされています。また、埋設用途に対応した製品も用意されており、幅広いニーズに応えます。ここでは、それぞれの詳細な仕様を見ていきましょう。
共通仕様
まず、全製品に共通する基本的な仕様です。水道の給水ラインから空調・衛生配管まで、安心して使用できる性能を備えています。
基本性能
- 適用流体水道水・清水
- 最高許容圧力1.0MPa
- 仕様温度範囲0℃ ~ 45℃
適用管種
- HIVP水道用耐衝撃性硬質塩化ビニル管 (JIS K 6742)
- VP硬質塩化ビニル管 (JIS K 6741, K 6742)
※上記仕様は東洋株式会社の製品カタログに準拠しています。
製品別仕様一覧
以下にゲートバルブとボールバルブの各呼び径における材質、寸法、価格をまとめました。製品選定の際にご活用ください。
1. ゲートバルブ (10K)
流量の微調整に適した仕切弁タイプです。通常品と埋設用の2種類があります。
| 項目 | ゲートバルブ(日水協認証マーク付) | |
|---|---|---|
| 通常品 (LE-BSC) | 埋設用 (LE-BSC-OR) | |
| 製品コード | 01A1A67 | 01A1A74 |
| 本体材料 | 鉛レス青銅 CAC911 (LFBC) | |
| ジスク/シート材料 | CAC911 (LFBC) | |
| ハンドル材料 | ZDC2 又は ADC12 | 黄銅 |
| Oリング | NBR | |
| 寸法(mm) / 価格(円) | ||
| 呼び径 13A (½B) | L:87, H:79, D1:48 / ¥7,610 | L:87, H:90, D1:60 / ¥8,290 |
| 呼び径 20A (¾B) | L:109, H:89, D1:55 / ¥9,640 | L:109, H:99, D1:70 / ¥10,600 |
| 呼び径 25A (1B) | L:121, H:105, D1:63 / ¥13,900 | L:121, H:111, D1:70 / ¥15,300 |
2. ボールバルブ
90度のハンドル操作で素早く全開・全閉が可能なボール弁タイプです。
| 項目 | ボールバルブ(日水協認証マーク付) | |
|---|---|---|
| T形ハンドル (LBOXC-T) | レバーハンドル (LBOXC) | |
| 製品コード | 01K1AS4 | 01K1AR7 |
| 本体材料 | 鉛レス青銅 CAC911 (LFBC) | |
| ジスク/シート材料 | ステンレス SUS304 / PTFE | |
| ハンドル材料 | 強化プラスチック | SUS430 |
| Oリング | NBR | |
| 寸法(mm) / 価格(円) | ||
| 呼び径 13A (½B) | L:123, H:77, D:100 / ¥8,820 | L:123, H:77, D:100 / ¥8,820 |
※寸法記号:L=面間, H=高さ, D/D1=ハンドル径/キャップ径。価格は2025年11月時点の参考情報であり、変更される場合があります。
信頼性の証:TSソケットの性能試験データ
「えん結びバルブ」の核心部であるTSソケットは、その性能と信頼性を証明するため、厳格な試験をクリアしています。ここでは、カタログに記載されている主要な試験結果をご紹介します。
施工性
JIS K 6743(水道用硬質塩化ビニル管継手)のHITS A形に規定される継手の寸法、ゼロポイント、差し込みしろ等に準拠しており、接着固定の施工性は従来のTS継手と同様の感覚で行うことができます。
耐水圧性
JIS K 6743 9.1.2に準拠した試験において、水圧4.0MPaを1分間加えても異常がないことが確認されています。これは最高許容圧力1.0MPaに対して4倍の安全率を確保していることを意味し、極めて高い耐圧性能を示しています。
引張強度試験
バルブと接合した塩ビ管(HI管)を引っ張り、接合部の強度を測定する試験です。いずれの呼び径においても、接合部ではなくHI管本体、またはTS接着部分が先に破損するという結果が得られており、接合部が管本体と同等以上の強度を持つことが証明されています。
| 呼び径 | 引張強度 (kgf) | 破損箇所 |
|---|---|---|
| 13 A | 520以上 | HI管又は、TS接着部分より破損 |
| 20 A | 820以上 | |
| 25 A | 900以上 |
ねじりトルク試験
パイプレンチでHI管をねじり、TS接合部分の耐トルク値と管自体の耐トルク値を比較する試験です。試験結果は以下の通り、接合部が管よりも強いことを示しています。
TS接合部分の耐トルク > 管の耐トルク
これらの試験結果は、「えん結びバルブ」の接合部が、単に施工が簡単なだけでなく、非常に高い信頼性と耐久性を兼ね備えていることを客観的に示しています。
失敗しない!「えん結びバルブ」の正しい施工要領
「えん結びバルブ」の性能を最大限に引き出すためには、正しい手順での施工が不可欠です。ここでは、カタログに記載されている施工要領をステップごとに分かりやすく解説します。
- パイプの確認・切断変形・割れ・傷がないHIVP管またはVP管を使用してください。管を管軸に対して直角に切断します。
- 面取り切断後、パイプ端面のバリを完全に取り除くため、専用の工具等でC0.5程度の面取りを行ってください。この作業は、接着剤を均一に塗布し、確実な接合を行うために非常に重要です。
- 汚れの除去バルブ本体のソケット内面と、パイプの挿入部(外面)に付着している油分、水分、汚れなどを、乾いた布で丁寧に拭き取ってください。
- さし込み深さのマーキングパイプをソケットに挿入する深さを確認し、管の外周にマークを付けます。深さは呼び径によって異なります。
- 呼び径 13A: 26 mm
- 呼び径 20A: 35 mm
- 呼び径 25A: 40 mm
- 接着剤の塗布バルブのソケット内面とパイプ外面(マーキングした位置まで)の両方に、専用の接着剤を刷毛で薄く均一に塗布します。塗りすぎや塗りムラは接着不良の原因となります。
- 接合と保持接着剤塗布後、速やかにパイプをバルブソケットの奥まで一気に、ひねらずに差し込みます。差し込んだら、そのままの状態で30秒以上しっかりと押さえつけ、接着剤が初期硬化するのを待ちます。
- 養生接合後、最低でも15分以上は、接合部に曲げや引張りなどの力が加わらないように静置してください。その後、通水や圧力試験を行う前には、接着剤メーカーが推奨する養生時間を必ず確保してください。
まとめ:次世代の配管工事を担う「えん結びバルブ」
東洋株式会社の「えん結びバルブ」は、単なる製品ではなく、塩ビ配管工事における生産性、安全性、信頼性を飛躍的に向上させるためのトータルソリューションです。
「バルブソケット不要」「面間寸法の短縮」「強固な接合部」「環境配慮設計」という4つの大きなメリットは、施工者の負担を軽減し、工期を短縮するだけでなく、建築物全体の品質向上にも寄与します。豊富な性能データに裏打ちされた高い信頼性も、安心して採用できる大きな理由です。
水道給水、空調、衛生設備など、塩ビ配管が関わるあらゆる現場で、この革新的な「えん結びバルブ」は、これからのスタンダードとなっていくことでしょう。配管工事の効率化と品質向上を目指す全ての技術者にとって、検討する価値のある優れた製品です。


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