住宅の排水設備工事で欠かせない資材のひとつが「小口径マス」です。キッチン・洗面台・浴室・トイレなどから流れてくる排水を集め、下水道本管へとつなぐ重要な役割を担っています。
アロン化成のSDシリーズ小口径マスはその代表的な製品ですが、なかでも施工現場で特に高い評価を受けているのが「Vマス(SDVシリーズ)」です。
「Vマスって通常のSDマスと何が違うの?」「品番のSDV90Y 100×75-150の読み方がわからない」「どんな場面で使うべきなの?」——この記事では、そんな疑問について解説いたします。
小口径マスとは?基本的な役割を確認しよう
まずは小口径マスの基本から押さえておきましょう。
小口径マスとは、宅地内の排水配管システムに設置される点検・接続用の容器(ます)のことです。住宅の排水管の途中や合流点・曲がり点・起点などに設置し、以下の役割を担います。
小口径マスの主な役割
- 複数の排水管を1か所に合流させる
- 配管の向きを変える(90°・45°など)
- 排水管の点検・清掃・補修ができる開口部を設ける
- 排水の流れを整えてつまりを防止する
一般的な住宅には複数の小口径マスが設置され、それぞれが汚水桝・雨水桝・インバート桝などの役割を担いながら、最終的に公共下水道の取付け桝へとつながります。
アロン化成とは?業界をリードする小口径マスのパイオニア
アロン化成株式会社は、塩ビ(PVC)製の排水・下水道関連製品を専門とする国内大手メーカーです。小口径マス・排水継手・ 雨水浸透ますなど、住宅設備分野で幅広い製品を展開しており、SDシリーズ小口径マスは配管工事の現場で最も広く使われている製品のひとつです。
SDシリーズ小口径マスのVマスとは?
「V」の意味
アロン化成のSDシリーズには、通常のSDマスと「Vマス(SDVシリーズ)」があります。「V」は形がV字という意味ではなく、「回転エルボ付き(V起点・V合流)」を意味します。
通常SDマスとVマス(SDVシリーズ)の最大の違い
| 比較項目 | 通常SDシリーズ | VマスSDVシリーズ |
|———|————-|——————|
| エルボの構造 | 固定式(動かない) | 回転式(動かせる) |
| 現場での高さ調整 | できない | エルボを回転させて調整可能 |
| 施工の手間 | 精密な掘削・据え付けが必要 | 誤差を現場で吸収できる |
| 改修工事への対応 | やや難しい | 既設配管への接続に最適 |
| 品番の特徴 | SD90L・SD90Yなど | SDV90L・SDV90Yなど(Vが入る) |
回転エルボとは?
Vマスの最大の特長である「回転エルボ」とは、マス本体の側面に取り付けられた360°回転可能なエルボ継手のことです。
通常のSDマスではエルボ(管の差し込み口)の位置・角度が製造時に固定されているため、設置後に枝管の高さを変えることができません。そのため、配管の勾配や現地の地盤状況に合わせた精密な掘削・据え付けが必要になります。
一方、Vマスの回転エルボは施工後でも自在に回転でき、枝管の差し込み口の高さ・向きを現場でリアルタイムに微調整できます。これにより:
- 掘削の精度がある程度ラフでも調整でカバーできる
- 改修工事で既設の枝管高さが想定と異なっていても対応できる
- 複数の作業員がいなくても1人で高さを確認しながら固定できる
という施工上の大きなメリットが生まれます。
品番の読み方|「SDV90Y 100×75-150」を完全解説
Vマスの品番は一見複雑に見えますが、構成要素を一つずつ理解すれば簡単に読み解けます。参考品番「SDV90Y 100×75-150」を例に解説します。
| 記号 | 意味 |
|——|——|
| SD | シリーズ名(アロン化成の小口径マスシリーズ) |
| V | Vマス(回転エルボ付き)であることを示す識別記号 |
| 90 | 角度:90°(45°の場合は「45」) |
| Y | 形状:Y字合流型(Lの場合は「L」=起点・L字型) |
| 100 | 本管(主管)の呼び径:φ100mm |
| ×75 | 枝管の呼び径:φ75mm |
| -150 | マス本体の立上り(内径):φ150mm |
LタイプとYタイプの違い
L(エル)タイプ:V起点マス
配管の「起点」として使用します。排水管の末端(台所・洗面台の排水管が始まる地点)など、配管が1本しかつながらない場所に使います。90°の曲がりを持ち、縦管から横引き管へ方向を変えます。
Y(ワイ)タイプ:V合流マス
2本の排水管が合流する「Y字形」の接続に使用します。枝管(支管)が本管に合流する箇所に設置します。
Vマスのラインナップ一覧
V合流マス(SDV90Y・SDV45Y系)
| 品番 | 本管口径 | 枝管口径 | 立上り径 | 角度 |
|——|———|———|———|——|
| SDV90Y 100×50-150 | φ100 | φ50 | φ150 | 90° |
| SDV90Y 100×75-150 | φ100 | φ75 | φ150 | 90° |
| SDV90Y 100×100-150 | φ100 | φ100 | φ150 | 90° |
| SDV90YS 100×75-150 | φ100 | φ75 | φ150 | 90°(3cm段差付) |
| SDV90YS 100×100-150 | φ100 | φ100 | φ150 | 90°(3cm段差付) |
| SDV45Y 100×50-150 | φ100 | φ50 | φ150 | 45° |
| SDV45Y 100×75-150 | φ100 | φ75 | φ150 | 45° |
| SDV45Y 100×100-150 | φ100 | φ100 | φ150 | 45° |
| SDV45YS 100×75-150 | φ100 | φ75 | φ150 | 45°(3cm段差付) |
| SDV45YS 100×100-150 | φ100 | φ100 | φ150 | 45°(3cm段差付) |
V起点マス(SDV90L系)
| 品番 | 本管口径 | 枝管口径 | 立上り径 |
|——|———|———|———|
| SDV90L 100×50-150 | φ100 | φ50 | φ150 |
| SDV90L 100×75-150 | φ100 | φ75 | φ150 |
| SDV90L 100×100-150 | φ100 | φ100 | φ150 |
「S(段差付)」モデルについて
品番末尾に「S」がつく「SDV90YS」などは、3cm段差付きモデルです。合流する枝管の高さが本管より3cm高くなるよう設計されており、合流点での排水の乱れを防いでスムーズな流れを確保します。段差があることで、本管を流れてきた排水が枝管の流入口を塞ぐ逆流現象も防ぎやすくなります。
方向バリエーション(右・左・兼用)
Y合流マス・L起点マスには「右(R)」「左(L)」「兼用(RL)」の方向バリエーションがあります。
- 右(R):本管の流れ方向に対して、枝管が右から合流
- 左(L):本管の流れ方向に対して、枝管が左から合流
- 兼用(RL):右・左どちらにも使用可能(ただし勾配なし)
現場での配管レイアウトに合わせて選びます。なお、兼用型は勾配が設けられていないため、使用箇所に注意が必要です。
仕様・スペック詳細
SDV90Y 100×75-150 の主要寸法
| 寸法記号 | 値(mm) |
|———|———|
| 立上り内径 | φ150 |
| 本管口径 | φ100 |
| 枝管口径 | φ75 |
| L(本体長さ) | 約300 |
| Ho(高さ) | 193/190(右/左) |
共通スペック
| 項目 | 仕様 |
|——|——|
| 材質 | 硬質ポリ塩化ビニル(硬質PVC・塩ビ) |
| 適合規格 | プラスチック・マスマンホール協会規格 |
| 接続管 | VP管・VU管(塩ビ管) |
| 標準勾配 | 2/100(2%勾配) |
| 対応用途 | 汚水用・雨水用どちらにも使用可 |
| 梱包単位 | 4個入り/箱 |
| 蓋 | 別売り |
材質が「硬質PVC(塩ビ)」であることのメリット
- 耐薬品性:汚水・排水に含まれる酸・アルカリに強い
- 耐腐食性:金属製と異なり、錆びない・腐食しない
- 軽量:施工・運搬が容易
- コスト:コンクリート製マスと比べて安価
- 施工性:切断・加工が容易
Vマスの施工方法|現場で役立つポイントを解説
設置場所の選定
Vマスは以下の箇所に設置します。
- 配管の合流点(Y合流マス):複数の排水管が1か所に合流する箇所
- 配管の起点・曲がり点(L起点マス):排水配管の始点や90°の方向転換箇所
- 宅地内の排水システム全体:汚水桝・雨水桝として配管経路に沿って設置
施工の流れ
STEP 1:掘削・基礎づくり
設置位置を決め、マスの外径より少し大きめに掘削します。底部に砂基礎(砂を敷き均す)を施工し、マスが傾かないよう安定した基礎を確保します。軟弱地盤の場合は特に入念な基礎処理が必要です。
STEP 2:マスの据え付け
砂基礎の上にVマスを設置します。水糸・下げ振り・水準器などを使い、マスの立上り部が垂直になるよう正確に据え付けます。Vマスの場合、この時点ではまだエルボの向き・高さを固定しなくてOKです。
STEP 3:回転エルボで高さ・向きを調整(Vマス最大の特長)
本管・枝管を仮接続しながら、回転エルボを回転させて枝管の高さ・向きを微調整します。指定の勾配(標準2/100)になるよう現地で確認しながら位置決めします。この工程がVマスの最大の利点であり、通常のSDマスでは行えない現場対応力です。
STEP 4:配管の接続
本管・枝管をVマスのソケットにしっかり差し込んで接続します。接着剤(塩ビ管用)を使用して確実に固定します。
STEP 5:埋め戻し・蓋の設置
配管接続後、砂・砕石で埋め戻します。最後に専用の蓋(別売り)をマスの立上り部に設置して施工完了です。
施工上の重要な注意点
① 蓋は別売りのため必ず一緒に注文する
Vマス本体には蓋が付属していません。設置場所の交通条件・用途(汚水・雨水)に合わせた蓋を別途手配してください。
② 兼用型(RL)は勾配がない
右・左兼用タイプは製品上の勾配が設定されていません。適切な勾配を確保するためには右型または左型を選定してください。
③ VP管・VU管専用
接続できる管材は塩ビ管(VP管・VU管)のみです。ポリエチレン管や鋳鉄管には使用できません。
④ 段差付(S)モデルの使い分け
合流部での逆流・水の乱れが懸念される場合は「段差付(SDV90YS)」を選びましょう。
Vマスが特に活躍するシーン
① 新築住宅の宅内排水工事
新築住宅では、キッチン・洗面台・浴室・トイレなど複数の排水管を集めて下水道本管につなぐ排水システムを構築します。Vマスはこの排水経路の合流点・起点として標準的に使用されます。回転エルボにより、設計通りの勾配を確実に確保しながら効率よく施工できます。
② 改修・リフォーム工事での既設配管への接続
改修工事では、既設の配管位置・高さが設計図と微妙に異なることがよくあります。通常のSDマスではこうした誤差に対応しにくいですが、Vマスの回転エルボなら現地で微調整できるため、既設配管への接続がスムーズです。
③ 建て替え工事
既存宅の解体後に新しく排水システムを構築する建て替え工事では、旧配管の接続位置・高さがまちまちなことがあります。Vマスの調整自由度が大きな助けになります。
④ 複数の排水管が集中する複雑な配管計画
複数の居室・設備からの排水管が複雑に絡み合う配管計画では、Vマスの合流機能(Y合流)と調整機能(回転エルボ)が組み合わさって、複雑なレイアウトでも効率的に施工できます。
通常SDマスとVマス、どちらを選ぶべき?
| 状況 | おすすめ |
|——|———|
| 新築工事で設計図通りに精密施工できる | 通常SDマス・Vマスどちらでも |
| 改修・リフォームで既設配管に合わせる必要がある | Vマス(SDVシリーズ) |
| 現場でのさらなる施工スピードを求める | Vマス(SDVシリーズ) |
| 1人での施工が多い | Vマス(SDVシリーズ) |
| コストを最優先にしたい | 通常SDマス(やや安価) |
基本的にはVマスのほうが施工性が高く、現場でのトラブルリスクを抑えやすいため、特段の理由がなければVマスを選ぶことをおすすめします。



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