はじめに
バルブは形や材質など初めての方には理解するのが難しいです 今回はバルブの形状に関してまとめてみました
ゲートバルブ

ゲートバルブ(仕切弁)とは、配管内を流れる流体(液体や気体)の流れを「完全に開く」または「完全に閉じる」ために使われるバルブの一種です。
- 構造と動作原理
- ゲートバルブは、バルブ本体(ボディ)内部に「ゲート」と呼ばれる円盤状またはくさび状の弁体(ディスク)があり、これを流路に対して垂直に上下させることで開閉します。
- ハンドルを回すと弁棒(ステム)が上下し、弁体がスライドして流体の流れを遮断または開放します。
- 水門のような構造から「ゲート(門)バルブ」と呼ばれ、また「仕切弁」とも呼ばれます。
- 特徴
- **流路が直線的**で、全開時は圧力損失が非常に少なく、流体がスムーズに流れます。
- **全開・全閉で使用**するのが基本で、中間開度での使用(流量調整)には適しません。中間開度で使うと弁体が振動し、損傷や漏れの原因になるためです。
- **大口径や高圧・高温にも対応**できるため、工場やインフラ設備の配管など、幅広い用途で利用されます。
- 主な用途
- 水道、ガス、空調、工場設備など、流体の「完全な遮断」や「完全な開放」が求められる場所で使われます
- 種類
- 主に「内ねじ式」と「外ねじ式」の2種類があり、設置場所や流体の性質に応じて使い分けます
- 他のバルブとの違い
- グローブバルブやボールバルブなどは流量調整にも使えますが、ゲートバルブは「流す・止める」用途に特化しています
まとめ:
ゲートバルブは、流体の流れを「完全に止める」または「完全に流す」ためのバルブで、圧力損失が少なく、主に全開・全閉で使用される点が最大の特徴です。流量調整には向いていませんが、シンプルな構造と高い信頼性から、さまざまな配管システムで広く使われています
グローブバルブ

グローブバルブ(玉形弁)とは、主に流体の「流量調整」と「遮断」に用いられるバルブの一種です。
主な特徴
- 構造
- バルブ本体(ケーシング)が球形(globe=球体)で、入口と出口の中心線が一直線上にあり、流体の流れがS字状になる構造です。
- 弁体(ディスク)を上下させて、座面に押し付けることで流体を制御します。
- 機能・用途
- 流量調整に優れる:弁体の開度を細かく調整できるため、流体の流量をコントロールしやすいのが最大の特徴です。
- 締切り性能が高い:しっかりと流体を止めることができるため、「ストップバルブ」とも呼ばれます。
- 頻繁な操作や中間開度での使用に適する:開閉操作を繰り返す用途や、流量調整が必要な配管系統に向いています。
- 短所
- 圧力損失が大きい:流路がS字状で狭い部分があるため、全開時でも流体の勢いが弱まりやすく、圧力損失が大きいです。
- 大口径には不向き:構造上、大口径の配管にはあまり適していません。
- 開閉トルクが大きい:閉止時に流体の全圧力を弁棒が受けるため、開閉時に大きな力が必要です。
主な使用例
- **水・油・空気・蒸気などの配管**で、流量調整や頻繁な開閉が必要な場所。
- **工場設備やインフラ設備**など、精密な流量制御が求められる用途。
ゲートバルブとの比較
バルブ種別 | 主な用途 | 流量調整 | 圧力損失 | 大口径対応 | 開閉トルク |
---|---|---|---|---|---|
グローブバルブ | 流量調整・遮断 | ◎ | × | × | × |
ゲートバルブ | 完全開閉(ON/OFF) | × | ◎ | ◎ | ○ |
まとめ:
グローブバルブは、流量調整や流体の遮断に優れ、締切り性能が高い一方、圧力損失が大きく、大口径や排出用途には不向きです。流量制御が必要な配管に最適なバルブです。
チェッキバルブ

チェッキバルブ(逆止弁)とは、流体の逆流を防止するための自動開閉式のバルブです。
流体が正方向に流れるときは弁体が圧力で開き、逆流しようとすると弁体が自動的に閉じて流れを遮断します。これにより、配管や機器の損傷やトラブルを防止します。
主な特徴と仕組み
- スイング式チェッキバルブが代表的で、円盤状の弁体が蝶番(ヒンジ)で吊るされており、流れによりドアのように開閉します。圧力損失が小さく、水平・垂直配管の両方に使用可能です。
- リフト式チェッキバルブは弁体が上下に動き、シール性が高いですが圧力損失が大きく、主に小口径で水平配管に使われます。
- 逆流防止だけでなく、ウォーターハンマー現象(流体の急激な流れ変化による衝撃波)の軽減にも役立ちます。
主な種類と特徴
種類 | 構造・動作特徴 | 主な用途・特徴 |
---|---|---|
スイング式チェッキバルブ | 弁体(円盤状)が蝶番(ヒンジ)で吊り下げられ、流体の圧力で開閉。圧力損失が小さい。 | 中低層ビル、工場、プラント配管で最も多く使われる。ウォーターハンマー防止のためカウンターウェイト装着可。 |
リフト式チェッキバルブ | 弁体が垂直に上下動。流体圧で開き、自重で閉じる。シール性が高いが圧力損失は大きい。 | 小口径や高シール性能が求められる配管に適する。水平設置が条件。 |
リングセット式チェッキバルブ | 弁軸が偏心し、コンパクトで大型バルブに適す。シート交換可能。 | 大型配管向け。ウォーターハンマー防止機能あり。 |
サイレントチェッキバルブ | 弁体がスプリングで高速閉止し逆流を早期に防止。 | 小口径でウォーターハンマー防止に優れる。 |
デュアルプレート式チェッキバルブ | 2枚の弁板が観音開き。コンパクトで中小口径に適す。 | ウェハータイプで設置スペースが狭い場所に向く。 |
ティルティング式チェッキバルブ | 偏心構造+カウンターウェイトで急閉止。 | 中口径でウォーターハンマー防止に効果的。 |
- 逆流防止:ポンプ停止時や配管内圧力変動時に流体が逆流しないように自動的に閉じる。
- 流体の一方向流通の確保:配管内の流れを一方向に保つことで機器や配管の損傷を防止。
- ウォーターハンマー対策:スイング式やサイレント式などは逆流時の衝撃を和らげる設計がある。
用途
- ポンプの吐出側配管での逆流防止
- 工場やプラントの配管設備
- 上下水道設備や空調配管など
まとめ
チェッキバルブは、流体の逆流を自動的に防止し、配管系統の安全性と効率性を高める重要な装置です。特にスイング式が広く使われており、流体の流れに応じて弁体が開閉するシンプルで信頼性の高い構造を持っています。
ボールバルブ

ボールバルブとは、球状(ボール)に貫通穴を設けた弁体を回転させることで、流体の流れを開閉・制御するバルブの一種です。
主な構造と仕組み
- 構造
- バルブ本体内部に「ボール」と呼ばれる球体があり、その中央に流路となる穴が貫通しています。
- ボールは「ボールシート」と呼ばれるシートリングで挟み込まれ、ステム(軸)と連結されています。
- ハンドルやアクチュエーターを90度回転させることで、ボールも同時に回転し、流体の通路が開閉します。
- 動作原理
- ボールの穴が配管の流れと一致しているときは全開(流体が通過)、90度回転させると穴が流れと直角になり全閉(流体が遮断)となります。
- 開閉状態はハンドルの位置で一目で判別できます。
特徴
- 操作が簡単で迅速:ハンドルを90度回すだけでON/OFFでき、操作時間が短い。
- 圧力損失が非常に小さい:流路が配管と同じ形状で、全開時の流体抵抗がほとんどありません。
- シール性が高い:PTFEなどの樹脂製シートを使い、漏れを防止します。
- フルボア構造:配管径と同等の流路を持つため、流体の流れを妨げません。
- 多様な用途:水、空気、ガス、油、粉体など、さまざまな流体に対応可能。
主な種類
種類 | 特徴・用途 |
---|---|
フローティング型 | ボールを2枚のシートで挟み、流体圧でシール。小~中口径・標準圧力向け。 |
トラニオン型 | ボールを上下で支持し、シート背面のバネでシール。大口径・高圧向け。 |
- 部分開度での流量調整にはあまり向かず、主に全開・全閉用途に適しています。
- シート材質や構造によっては高温・高圧用途に制限があるため、選定時は流体条件に注意が必要です。
まとめ
ボールバルブは、シンプルな構造と高い操作性、低圧力損失を特徴とし、配管の流体制御に広く使われるバルブです。主にON/OFF用途で活躍し、様々な産業分野で利用されています。
バタフライバルブ

バタフライバルブ(バタフライ弁)とは、配管内の流体(液体や気体)の流れを、円盤状の弁体(ディスク)を90度回転させて開閉・調整するバルブの一種です。
主な構造と仕組み
- 構造
- 本体(ボディ)、円盤状の弁体(ディスク)、回転軸(ステム)、密閉用のシート(パッキン)などから構成されます。
- ディスクが配管断面中央に配置され、これを90度回転させることで流体の流れを「開」「閉」または「調整」します。
- 動作原理
- ハンドルやアクチュエーターを回すと、ディスクが回転し、全開から全閉まで一瞬で切り替えられます。
- 中間開度での流量調整も可能です。
特徴
- 軽量・コンパクト
- 構造がシンプルで部品点数が少なく、他のバルブに比べて軽量・省スペース設計です。
- 設置・メンテナンスが容易
- 面間寸法が短く、取り付け・取り外しが簡単です。
- 圧力損失が小さい
- 全開時の圧力損失が比較的少なく、大口径配管にも適しています。
- 幅広い用途
- 水、空気、薬品、蒸気、原油など多様な流体に対応し、上下水道、工場、プラント、空調設備などで広く使われています。
- 流量調整も可能
- 中間開度での流量調整にも優れています。
主な種類
種類 | 特徴・用途 |
---|---|
センターディスク形 | 弁棒の中心線とディスク外周のシール面が同一面上。構造がシンプル。 |
二重偏心形 | ステム中心線が配管中心線からずれ、シール性・耐久性が高い。 |
三重・四重偏心形 | 高温・特殊流体向け。シール性や耐久性をさらに向上。 |
完全密閉型 | 漏れを許さず高い気密性。水道や一般流体向け。 |
メタルシート型 | 高温・ガスなど特殊流体向け。少量の漏れを許容。 |
まとめ
バタフライバルブは、軽量・コンパクトで設置性が高く、90度の回転操作で流体の開閉・調整ができるバルブです。大口径配管や省スペースが求められる現場、流量調整用途など幅広く利用されています。
🎯 まとめ
バルブにはそれぞれ得意な用途と特徴があります。
- 遮断に特化:ゲートバルブ、ボールバルブ
- 流量調整に最適:グローブバルブ、バタフライバルブ
- 逆流防止:チェッキバルブ
設備設計や現場選定の際には、流体の性質・配管径・設置スペース・操作性などを総合的に考慮して適切なバルブを選定することが大切です。
今後のバルブ選定・施工の参考になれば幸いです!
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