都市インフラの基幹を支える「鋳鉄管」。中でも、ダクタイル鋳鉄管は上水道や工業用水管として不可欠な存在です。しかし、「排水鋳鉄管」と混同されることも多く、違いや選定基準が曖昧になりがちです。
この記事では、**ダクタイル鋳鉄管の基本情報、排水鋳鉄管との違い、そして国内主要メーカー(クボタ・栗本鐵工所・日本鋳鉄管)**の特徴をまとめて解説します。
1. ダクタイル鋳鉄管とは?
**ダクタイル鋳鉄管(Ductile Iron Pipe)は、黒鉛を球状にした球状黒鉛鋳鉄(FCD)**で作られた管材です。
従来のねずみ鋳鉄よりも、
- 引張強さ
- 耐衝撃性
- 耐圧性
に優れており、地震や圧力変動にも強いのが特徴です。
さらに、内面にはセメントモルタルライニング、外面にはタールエポキシ塗装やポリエチレンコーティングが施されており、腐食に強く長寿命(50年以上)です。
継手にはゴムパッキン式の「押し込み型継手」が主流で、施工も比較的簡単です。
2. 排水鋳鉄管との違い
項目 | ダクタイル鋳鉄管 | 排水鋳鉄管 |
---|---|---|
主な用途 | 上水道・送水・工業用水など高圧配管 | 建物内の排水・通気管 |
材質 | 球状黒鉛鋳鉄(FCD) | 片状黒鉛鋳鉄(FC)またはFCD |
強度・靱性 | 非常に高い | それほど高くないが排水には十分 |
内部処理 | セメントモルタル等で腐食防止 | 内面エポキシ塗装など |
継手方式 | ゴム輪押し込み式・耐震継手 | 押輪、ボルトナット締め |
使用圧力 | 高圧対応(耐圧10〜20kgf/cm²以上) | 常温常圧 |
つまり、ダクタイル鋳鉄管=外部配管で高耐圧・高耐震向け、排水鋳鉄管=建物内部の排水向けというのが大きな違いです。
3. 主な用途(ダクタイル鋳鉄管)
- 上水道本管・送配水管
- 工業用水(冷却水・洗浄水など)
- 農業用水・用排水設備
- 消火配管・スプリンクラー系統
- 河川横断・橋梁・トンネル区間
耐震継手を使用することで、地震時にも地盤変動に対応可能です。
4. 国内3大メーカーの比較
🏭 クボタ(KUBOTA)
- 国内シェア60%超の最大手メーカー
- 製品:K型管、NS形耐震管、GX形(高耐震)など
- 特徴:広範な製品ラインアップ、全国対応の販売網
- 最近の動き:日本鋳鉄管と2026年に合弁会社を設立予定。電気炉導入でCO₂排出削減へ
🔧 選定ポイント:大口径管や耐震管を探す場合、まず候補に上がる。公共工事やプラント配管にも多数実績あり。
🏭 栗本鐵工所(クリモト)
- 老舗企業で高機能継手技術に強みあり
- 製品:標準管から非開削工法用、フレキ継手、伸縮継手まで対応
- 特徴:狭小地対応、施工性を考慮した設計が多い
- 実績:下水道、農業水路、再開発地域などで導入例多数
🔧 選定ポイント:都市部の耐震補強やスペース制約のある現場に最適。
🏭 日本鋳鉄管株式会社
- クボタ・栗本と並ぶ国内3大メーカーの一角
- 製品:標準的なダクタイル鋳鉄管全般
- 特徴:地方自治体や民間向けにコストバランスの良い製品を提供
- 合弁会社(2026年設立予定)では電気炉導入で環境対応も進める方針
🔧 選定ポイント:中小案件・地方公共工事での安定調達に向いている。
5. 各社比較表
メーカー名 | 主な強み | 対応分野 |
---|---|---|
クボタ | 高耐圧・高耐震/広範囲な製品構成/全国対応 | 上水道・プラント・大規模インフラ |
栗本鐵工所 | 継手技術・非開削対応/都市部施工対応 | 再開発・下水道補強など |
日本鋳鉄管 | 安定供給力・コストバランス・地方支援体制 | 地方配水・中規模案件 |
6. 今後の市場動向と選び方
2026年には、クボタと日本鋳鉄管の合弁会社が本格稼働予定。電気炉導入による脱炭素化・老朽設備更新が進むことで、今後の製品にも影響が出る見込みです。
製品選定時は、以下の観点から検討をおすすめします:
- 耐震性・耐圧性重視 → クボタ・栗本の高耐震管
- 特殊現場や非開削工法 → 栗本
- コストと供給安定性 → 日本鋳鉄管
7. まとめ
ダクタイル鋳鉄管は、「高強度・高耐圧・耐震・耐食性・長寿命」を兼ね備えた、信頼性の高い配管材です。
一方で、排水鋳鉄管とは材質や用途、施工方法が異なるため、混同せずに正しく使い分けることが重要です。
国内では、クボタ・栗本鐵工所・日本鋳鉄管が主要3社として製品を供給しており、現場環境や設計要件に合わせて適切なメーカー・型式を選定することが、長期的なメンテナンス性と安全性を確保するカギとなります。
この記事が皆さまの参考になれば幸いです。
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